士官学校時代。




まだグンニャリした身体を壁に押し付けてどうにか立つ。
太陽が真上から射す。ジャンは何時ものように「何でもない」と呟いてみた。
何でもない。何でもない。

奇妙な布を何枚も纏った人間達。通りすがりに声をかけていく者も居る。

「やぁ!ジャン、今日は御子息様は一緒じゃないのかい?」
同級生の気安さで、ジャンはただ笑って手を振り返した。


何でもない。何でもない。



昨晩、不意に触れたあの掌の痺れるような熱。
赤と青だから相反するというのならそれはジャンにとっては最早救いだ。

ジャンは、産まれて初めて自らを戒める。これは何でもない。あれは何でもない。






 恋というものを、ジャンは図書館から借りた本で、知っていた。