そのままで







気詰まりで暫く会わないうちにメーテルのようになった弟を「気色悪ぃ」と吐き捨てた。
古いアニメだった。電車に乗って旅をしている女だった。遠去る女だった。喪服を着た
女だった。


「良く覚えているね、そんな昔のテレビを。」


面白がっているのか、つまらないのか、それさえ分からない表情で弟が言った。じっと
りと夜露に濡れたように張り付いている滲みは死の匂い。裸になれ、と喉元まで出掛
かって結局黙った。

それは弟の黒い服を脱がせれば消え去るようなものではなかったからだ。


棺桶から抜け出してきたような弟。




 ( もう帰り往く場所は違うのか。)



ハーレムは口を開く代わりに、忙しく煙草に火を点けた。絶望に近い色をハーレムは知っ
ている。




 (----------あの屋敷へ還ろう。還ろう。)







     煙草の煙が空へ還る前に消えた。